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レーザー雨滴計(LDG)の開発 

最終更新:2021.03.29、文書作成:2007.01.27

概要

LDG LDG_2015

自動連続的に雨滴の粒径・速度を計測できるシステムを開発しましています。名称は「レーザー雨滴計」(LDG; Laser Drop-sizing Gauge)で、光学式雨滴計(optical disdrometer)の一種です。このシステムにより、降ってくる雨滴1粒ごとの粒径と速度を測定し、降雨の雨滴粒径分布や運動エネルギーを得ることができます。自然降雨だけでなく、雪粒や林内雨滴も測定します。

基本的には、PCで制御するシステムです。C言語で開発したアプリケーションにより稼働します。開発当初(2001年)に比べ、2005年以降のversionは、PC制御での雨滴測定の安定性はかなり向上し、降雨に対する雨滴の捕捉率は95%を超えます。

Arduino系のマイコンによるロガー制御タイプも開発し、2017年より稼働しています。PC制御よりも精度が低く、限界最小粒径が小さいですが、バッテリーとソーラーパネルなどの併用で電源供給のない場所でも測定できます。

従来の市販されている雨滴測定システム(OTT Hydromet社のPARSIVEL、Thies CLIMA社のLaser Precipitation Monitor)と基本的な測定原理は一緒です。それらに比べると、小型(雨滴計のフレームが30cm四方程度)で安価であり、山地斜面への測器運搬や生産コストに利点があります。

測定原理

LDside

レーザー雨滴計は投光側と受光側の一対のセンサを使用しています。帯状のレーザービーム部分を雨滴が通過すると、受光側で受け取るレーザー量が減少し、それに伴いレーザー受光部から出力されるアナログ電圧が低下します。その電圧低下の様子から、通過した雨滴の粒径と速度を算出します。

通過する粒子の形状を、真球と仮定するか、楕円球と仮定するかが必要です。雨滴は楕円球、雪粒は形状が一定ではないため真球過程とすることが多いです。好みの形状を決める式を与えれば、それに応じて計算アルゴリズムを変更することが可能です。

測定例

DropMeasureData

林内外に雨滴計を置いて、同一降雨イベントで雨滴を測定した例。秒単位で雨滴を検出可能。青で示される林外雨(自然降雨)に比べて、緑で示される林内雨(林内雨)で大きな雨滴が発生していることがわかります。

貸し出し・共同研究

PCベースで動くレーザー雨滴計について、常に全てが稼動しているわけではなく、手元で余っている時期もあります。例えば、「人工降雨装置の性能評価を行いたい」「雨滴の大きさを測定したい」「雨滴の衝撃エネルギーを測定したい」という要望があれば連絡をください。共同研究・測器貸与などで協力できる可能性があります。

これまでの共同研究相手(機関種類ごとの共同研究実施順)
大学

東京大学、筑波大学、東京農業大学、三重大学、山梨大学、京都大学、東京農工大学、九州大学、京都造形芸術大学、東京理科大学

公的研究機関

防災科学技術研究所、情報通信研究機構、三重県林業研究所、森林総合研究所

民間企業

株式会社ハイドロテック、国土防災技術株式会社、株式会社テクノコア、株式会社大林組、中部電力株式会社

海外

University of Hawai'i (USA)、University of South Carolina (USA), University of Delaware (USA), Surface Hydrology and Erosion Group, IDAEA-CSIC (Spain)、University of Colorado Colorado Springs (USA)

測定実績

これまでに自分のLDGで雨滴・雪粒・人工降雨の水滴などを測定した場所を示します。じわじわと世界中に広げたいです。

レーザー雨滴計による観測地の分布 (Google Map)

関連文献

開発時に参考にした文献
  • 山田正・日比野忠史・鈴木敦・蓑島弥成・中津川誠. 1996. 新しいタイプのレーザー雨滴計の開発とこれを用いた降雨の雨滴粒径分布の観測.土木学会論文集 539: 15-30.
  • Loffler-Mang, M. and Joss, J. 2000. An optical disdrometer for measuring size and velocity of hydrometeors. Journal of Atmospheric and Oceanic Technology 17: 130-139.
雨滴計の性能評価が載っている自分の文献
  • Nanko, K., Hotta, N., Suzuki, M. 2006. Evaluating the influence of canopy species and meteorological factors on throughfall drop size distribution. Journal of Hydrology 329: 422-431.
  • Nanko, K., Mizugaki, S., Onda, Y. 2008. Estimation of soil splash detachment rates on the forest floor of an unmanaged Japanese cypress plantation based on field measurements of throughfall drop sizes and velocities. Catena 72: 348-361.
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